■アウトライン スプレンギサンドゥル内陸路(Sprengisandsleið)は現在では主に観光を中心に使われている内陸路だが、かつては内陸部のスプレンギサンドゥル砂漠地帯Sprengisandur を縦断しアイスランドの北部と南部を結ぶルートとして重要な役割を果たしていた。アルシンギ(国会)がシンクヴェトリルで開催されていた頃は東部の人々はこのルートを通ってアルシングに参加し、更には主教管区があったスカゥルホルトの多くの司教が東部地方を訪れる際などに利用された。具体的にはホフスヨークトルとヴァトナヨークトルの間を走り、南部高地にある水力発電所で有名なシガルダ(Sigalda)と北部高地のバゥルザルダールル渓谷(Bárðardalur)のファーム・ミーリ(Mýri)を結ぶ全長約200kmの内陸路で渡河地点が数多くある。この内陸路は17世紀になって一旦使用廃止となるが18世紀の後半になって再び利用されるようになる。車によって初めてスプレンギサンドゥルが縦断されたのは1933年のこと。橋がなく渡河地点が多い関係でこのルートをドライブするには4WD車が必要となる。 スプレンギサンドゥル砂原はアイスランドのほぼ中央部に位置し、境界線がほとんどはっきりしない、広範囲の砂漠地帯。一般的には南北にはエイヴィンダルヴェル(Eyvindarver)とキザギル(Kiðagil)の間、東西にはホフツヨークトルとトゥングナフェットルスヨークトルの間が砂原の範囲とされ、30kmX70kmの面積。海抜はほとんどの地点で700−800m。 スプレンギサンドゥル内陸路(F26)の北上ルートはシガルダ発電所(Sigölduvirkjun)が南の起点となります。シガルダはトゥングナアゥに挟まれた地点にある標高543mの尾根で傍にはフロインエイヤロゥンとクロゥクスロゥンの二つの潟湖が横たわっている。両潟湖の間にシガルダ発電所はある。近くにはちょっと目立つ山が聳えている。標高822mの山ソゥリスティンドゥル(Þóristindur)でこの附近の陸標的存在だ。出発して直ぐに右手に湖が広がるがこれがアイスランド最大の湖ソゥリスヴァトン(Þórisvatn)。面積は83平方`メートルで深さは113mにも及ぶ。湖の水面の海抜は592m。この湖は水量調整がされており、最高時には88平方`メートルに達する事がある。湖の北東部は標高738mの山ウーチゴングホプジによってふたつに分断され、湖としては珍しい湾をふたつ持っているのが特徴。湖岸は大部分が勾配が急で荒涼としている。かつては湖の放水口は最北端の河口ソゥリスオゥス(Þórisós)であったが水力発電所ができてからは勿論反対側のシガルダ河に流出するよう制御されている。ソゥリスヴァトン湖を右手に見て走り、湖の中間地を過ぎる辺りで最初の渡河ドライブが待っている。カルダクヴィースル川(Kaldakvísl)からの支流を渡る。カルダクヴィースルはヴァトナヨークトル氷河の西に水源を持つ氷河川で暫くはカルダクヴィースルを左手にしながらのドライブが続き、ソゥリスヴァトン湖から別れを告げる地点附近でカルダクヴィースル川を渡河することになる。ここでシガルダ発電所からの距離は27km程度。ここから更に幾つかの渡河を繰り返し72km程でヴァトナヨークトルとホフツヨークトルのほぼ中間地点に位置するニーイダルール渓谷(Nýidalur)に到着。ニーイダルールは標高1523mのトゥングナフェットルスヨークトル氷河の南に位置し、標高は800mに達する。高地にありながら植物が植生するユニークな一帯で、アイスランドで植生がある最も高地とされる。1845年に北部から旅してきて迷い込んだ農夫が見つけるまでは誰も足を踏み入れた事がない渓谷であった。ここにはアイスランド・ツーリング協会が運営するハットがふたつあり、夏の間(7月〜8月は管理人が常駐している。シガルダからの所要時間はノン・ストップで走れば2時間ちょっと、水道やトイレ、シャワーの施設がある。 ニーイダルール渓谷からふたつほど渡河して5km程先で路はふたつに分れる。右に入ればF910でアスキャに通じる内陸路。そのまま真直ぐ進みF28のドライブを続ける。分岐ポイントから15km弱で進行方向の右側に細長い湖が出現する。フィヨゥルズングスヴァトン湖で、乾燥期にはしばしば渇水状態になる事がある。ここを過ぎたら次の目的地はアルデイヤルフォス(Aldeyjarfoss)。フィヨゥルズングスヴァトン湖からの距離は77km。内陸路F28の右手に現れる大河はアイスランドでは4番目に長い河スキャゥルファンダフリョゥト(Skjálfandafljót, 178km)。アルデイヤルフォスの直ぐ近くには最も内陸部にあるファーム・ミーリ(Mýri)があるがここがスプレンギサンドゥル内陸路の北上ルートの終点となる。アルデイヤルフォスはスキャゥルファンダフリョゥト河にある滝の中で最も印象に残る瀑布。峡谷の内側の壁を覆う厚い玄武岩が積み重なった地層列を流れ落ちる。上部には縄をなったような形状の玄武岩層が見られ、見事は景観を呈している。滝の下手で川は氷堆石で切断されており、絶景のバゥルザルダールル渓谷を見下ろせる。また、滝の上部の高い氷堆石に囲まれたところがビューポイントになってなっていて、アスキャを中心とする250㎢もの広大なデインギュフィヨットル(Dyngjufjöll)一帯の壮大なパノラマが見られる。ビューポイントとデインギュフィヨットルの間には広大な溶岩荒地オゥダゥザフロイン。 ミーリからはスキャゥルファンダフリョゥト河に沿って842号線を北上し、37kmで神々の滝ゴーザフォスに近いファーム・フォスホゥルフォスホゥトル(Fosshóll)に到る。
■スポットガイド
★スプレンギサンドゥル Sprengisandur スプレンギサンドゥルはアイスランドのほぼ中央部に位置し、境界線がほとんどはっきりしない、広範囲の砂漠地帯。一般的には南北にはエイヴィンダルヴェル(Eyvindarver)とキーザギル(Kiðagil)の間、東西にはホフツヨークトルとトゥングナフェットルスヨークトルの間が砂原の範囲とされ、30km
x 70kmの面積。海抜はほとんどの地点で700−800m。 ★シガルダ Sigalda スプレンギサンドゥル内陸路(F26)の北上ルートの南の起点。シガルダはふたつのトゥングナアゥ川(Tungnaá)に挟まれた地点にある標高543mの尾根で傍にはフロインエイヤロゥン(Hrauneyjalón)とクロゥクスロゥン(Krókslón)の二つの潟湖が横たわっている。両潟湖の間に1977年に稼動運転を開始したシガルダ発電所(Sigölduvirkjun)がある。近くにはちょっと目立つ山が聳えているが、標高822mの山ソゥリスティンドゥル(Þóristindur)でこの附近の陸標的存在だ。 シガルダからスプレンギサンドゥル内陸路を北に進んで直ぐのところにある。フロインエイヤールは溶岩の島の意味でここにはゲストハウスがある。フロインエイヤールはアイスランドでも最も活発な火山地帯の端っこ、ヘックラ火山の北東、スプレンギサンドゥル内陸路(Sprengisandur F26)と北フィヤットラバク内陸路Fjallabaksleið Nyrðry, F208)のふたつのハイランド・ロードが交差する地点に位置している。内陸ハイランド観光の基地としてその周辺は未踏の自然がそのまま残る世界が広がっているのが魅力。例えば、トゥングナアゥルグリューフル峡谷はゲストハウスからほんの1kmで徒歩でも行けます。ツインルームが50室、100人を収容できるゲストハウスは同時にハイランド・センターになっていてレストランやショップそして給油所もある。 ★ヴェイジヴォトン湖群 Veíðivötn およそ1万年近く前の火山活動で形成された湖の集合体で、大小約50もの湖はほとんどがいわゆる火口湖で南西と北西の方向に、長さ20km、幅5kmの地域に横たわっている。湖によっては海抜560−600mの高地にある。火口湖や湖はほぼ2列に並ぶように横たわっている。透水層の溶岩質と岩滓質の地質のためにほとんどの湖は注ぎ込まれる水は地下に排出する。それぞれの湖は夏季には絶好のバードウオッチング・スポットとなるが、ブラウントラウトや北極イワナのフィッシング・スポットとしても人気を集めている。ここにはツーリスト用ハットが備わっている。代表的な湖はソゥリスヴァトンÞórisvatn(83㎢)、クヴィースラヴァトンKvíslavatn(21㎢)。 ★ソゥリスヴァトン湖 Þórisvatn アイスランド最大の湖ソゥリスヴァトン。面積は83平方`メートルで深さは113mにも及び、湖の水面の海抜は592m。この湖は水量調整がされており、最高時には88平方`メートルに達する事がある。湖の北東部は標高738mの山ウーチゴングホプジ(Útigönguhöfði) によってふたつに分断され、湖としては珍しく湾をふたつ持っているのが特徴。湖岸は大部分が勾配が急で荒涼としている。かつては湖の放水口は最北端の河口ソゥリスオゥス(Þórisós)であったが水力発電所ができてからは勿論反対側のシガルダ河に流出するよう制御されている。 ★カルダクヴィースル Kaldakvísl ヴァトナスカルズ峠とヴァトナヨークトル氷河の西に水源を持つ氷河川。現在、この川は水力発電所のための用水路が敷かれ、川はソゥリスヴァトンに流れ込むようになっている。 ヨークルヘイマールはトゥングナフェットルスヨークトル氷河の東側の突端近くにあるトゥンガナルボトナルと呼ばれるところにある。この近くにはアイスランド氷河学会の運営する大小ふたつのハットがある。このハットはヨーロッパ最大の氷河ヴァトナヨークトルを調査するためのベースキャンプとして利用されているが、事前に予約すれば宿泊することも可能だ。最近では測候所としても活用されている。ヨークルヘイマールの周囲は全くの不毛地帯。 ★ハゥゴングール Hágöngur 高い小道を意味する、外観が似かよったふたつの山で、それぞれ、北ハゥゴングールと南ハゥゴングールと呼ばれている。ふたつの山とも地質構造は流紋岩で、円錐形で険しい容姿を呈している。山と山はおよそ4km程離れているがそれぞれ独自に聳えているので際立って突出した存在感を示している。山の南にはハゥゴングフロイン溶岩原が広大な広がりが見て取れる。ハゥゴングフロイン溶岩原の南部にはより若い溶岩原トロトラフロインが連なるように広がっている。1988年にこの地域に電気と水を供給するためのダムが建設され、そのため、広大な地域がダムの湖底になって姿を消している。 ★ニーイダールル Nýidalur ニーイダールルはヴァトナヨークトルVatnajökull)とホフツヨークトル(Hofsjökull)のほぼ中間地点に位置する渓谷で”新しい谷”を意味する。もちろん、スプレンギサンドゥル山岳路にある。ニーイダルールは標高1523mのトゥングナフェットルスヨークトル氷河の南に位置し、海抜は800mに達する。高地にありながら植物が植生するユニークな一帯で、アイスランドで植生がある最も高地とされているところ。1845年に北部から旅してきて迷い込んだ農夫が見つけるまでは誰も足を踏み入れた事がない渓谷だ。渓谷はトゥングナフェットルスヨークトルの南部に切り込み、谷の入り口は西側となる。この入り口のちょうど真西にはアイスランド・ツーリング協会が運営するハットがふたつあり、夏の間(7月〜8月は管理人が常駐している。ここに1〜2泊してハイキングを楽しむツーリストも多い。ここをパスするだけの場合にはシガルダからの所要時間はノン・ストップで走れば2時間ちょっと、水道やトイレ、シャワーの施設があるので、休憩を兼ねてストップできる。ニーイダルール渓谷は別称でヨークルダールル渓谷(Jökuldalur)とも呼ばれている。 ★トゥングナフェットルスヨークトル氷河 Tungnafellsjökull (説明は⇒) ”希望の峠”を意味する峠道。名前はヴァイキングの定住の時代(874−930年)に起こったある事件に由来している。北アイスランドのバルザルダールル渓谷に居住を試みた最初のヴァイキングは北より南のほうがもっと暖かいという結論に達し、より豊かな生活環境を見つけるという希望ををもって、身の回りのすべてを抱えて南の地方に移住する決心をした。彼はそれを冬に実行した。すべての川は凍結していたので、事故に遭うことなく成功を収める事になった。 この峠はヴァトナヨークトルとトゥングナフェットルスヨークトルの両氷河に挟まれた広大な谷間(幅およそ13km)を走っている。海抜は900−940m、峠の長さは15km強。かつて、このエリアは南部にカルダクヴィースルKaldakvísl、北部にスキャゥルヴァンダフリョゥトSkjálfandafljótのふたつの川が流れ込んでいた。しかし、現在では岩の壁が築かれて、ヴォナルスカルズから谷の南部までいかなる水の流入をも遮断している。 ★フィョゥルズングスアルダ Fjórðungsalda 標高969mの低い山。スプレンギサンドゥル内陸路の中間地点の北寄りにあり、輝緑岩の楯状火山で古くて、かなり侵食が進んでいる。ここで敢えてこの山を取り上げたのはこの山はアイスランドのほぼ中心、お臍に当る地点に位置しているからだ。山の西の麓とスプレンギサンドゥル内陸路の間にはフィョゥルズングスヴァトン湖が横たわっている。浅い湖で乾季には干しあがり、湖の姿が消えてしまう事がある。 ★キーザギル Kiðagil スキャゥルヴァンダフリョゥト川Skjálfandafljótから西に向かって6km延びる狭い峡谷。但し、内陸路から峡谷は見られない。昔、スプレンギサンドゥル内陸路を通過する折、休憩地としたところで、スプレンギサンドゥルの砂漠地帯を渡る前と渡った後に旅人はここで自分の馬を放牧し休ませた。北に向かう際、旅人は自分の背後に幽霊や悪魔の霊を感じ、南に向かう折には旅人はこれらに出会い難事に遭うことを非常に恐れたといわれる。 ★ミョゥイダールル Mjóidalur ”狭い谷間”を意味する渓谷。バルザルダールル渓谷の先端から南に分かれる、謂わば支渓谷だ。スプレンギサンドゥル内陸路はこの狭い渓谷に並行して走っている。この渓谷と名前を同じくするファームがあるが1894年の昔に廃墟となっている。ミョゥイダールル渓谷はギーザギル峡谷まではるばると広がっている。バルザルダールル渓谷の最南端にあるファームからミョゥイダールル渓谷のイトリモーサルと呼ばれる地点までの距離は約20km。峡谷の南の一帯は比較的に植生が見られるが、北ではそこにあったファームが廃墟化して以来土壌が腐食し植物はほとんど見ることができない。峡谷を流れるミョゥアダルスアゥ川の所為でかつてはスプレンギサンドゥル内陸路を縦断することをかなり困難なものにしていたが、1977年にここに橋が架けられてこの障害が取り除かれ、それ以降多くのツーリストが4WDによる縦断をエンジョイするようになった。 ★イースホゥルスヴァトン Íshólsvatn バルザルダールル渓谷にあるファーム・ミール近くの無人の谷にある湖。面積は5.2㎢、最長部は5kmで深さは39m。ラングアゥ川や数本の小川がこの湖に流れ込み、フィスクアゥ川に流出している。大河スキャゥルヴァンダフリョゥトにある有名なアルドエイヤルフォスが直ぐ近くになる。ブラウントラウトと北極イワナのフィッシングでも有名な湖だ。 ★アルドエイヤルフォス Aldeyjarfoss アルデイヤルフォスはスキャゥルファンダフリョゥト河にある滝の中で最も印象に残る瀑布。峡谷の内側の壁を覆う厚い玄武岩が積み重なった地層列を流れ落ちる。上部には縄をなったような形状の玄武岩層が見られ、見事は景観を呈している。滝の下手で川は氷堆石で切断されており、絶景のバゥルザルダールル渓谷を見下ろせる。また、滝の上部の氷堆石に囲まれた高いところがビューポイントになっていて、アスキャを中心とする250㎢もの広大なデインギュフィヨットル(Dyngjufjöll)一帯の壮大なパノラマが一望できる。ビューポイントとデインギュフィヨットルの間には広大な溶岩荒地オゥダゥザフロインが広がる。 ★ミーリ Mýri バゥルザルダールル渓谷(Bárðardalur)にの西にあり、最も内陸にあるファームでスプレンギサンドゥル内陸路の北の入り口。 ★バゥルザルダールル Bárðardalur バゥルザルダールル渓谷はリョゥサヴァトンスカルズ峠(Ljósavatnskarð)とゴーザフォスの滝の間に広がる狭くて長い渓谷。渓谷の西側には750m級の玄武岩質の山々が連なり、東側には荒涼とした一帯が続く。ゴーザフォスの滝とファーム・ミーリ間には842号線が通じているが、この道は大河スキャゥルファンダフリョゥトに沿って走る全長37kmの道路。
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Revised:08/06/30