■この民話の場所と背景
民話はボルガルフィヨルズゥルが舞台です。ボウルガルフィヨルズゥルは西アイスランドと東アイスランドに同名で2箇所ありますが、この民話は東アイスランドです。東フィヨルドに位置するボルガルフィヨルズゥルはアイスランドで最も絵になる美しい地域のひとつです。ニャールズヴィークとロズムンダルフィヨルズゥルの間に位置し、東部フィヨルド地帯の高地に切り込んでいる、東部フィヨルド地帯で最北にあるフィヨルドで、長さは5kmで幅が4km程度です。ボルガルフィヨルズゥルは、北はランドセンディから南はハプナルタンギ半島まで延びています。
近年になって、フィヨルドの先端にあるバッカゲルジという村が発展を遂げています。フィヨルドの東の沖合にはハプナルホゥルミと云う小さな島が浮かんでいます。巣ごもり期には余多の海鳥で埋め尽くされる島です。沿岸から島に向かって岸壁が造られているため、漁師にとって絶好の漁船の避難所になっています。沿岸から内陸に向かって広大で草深い谷間が延びていて、ファームが点在しています。谷は変化に富んだカラフルな山々にかこまれており、浅黒い玄武岩や青白い流紋岩が混じりあって見事なロック・フォーメーションをなしています。谷の先端部には海抜1100mを越える、暗く印象的な雰囲気のデイルフィヨットル山がそそり立っています。
バッカゲルジの村がある低地にはアゥルファボルグ(妖精の岩)と称される岩山があります。ここは昔からず〜と長い間、アイスランドの妖精が集団で住み着く中心地のひとつと信じられ、古くから多くの人々が妖精の存在を見続けてきました。古き時代には、妖精はボルガルフィヨルズゥルの内陸にある狭い渓谷カイキュダールルにある教会の礼拝などに出席していたと信じられていました。渓谷には教会の岩を意味する巨大な岩山キルキュステインがありますが、形はまるで教会のような様相をなしています。妖精はしばしばカイキュダールルの教会に馬に乗って連れ立って向かう姿が目撃されました。東ボルガルフィヨルズゥルの人々は漁業や海産物の加工業そして農業によって生計を立てています。バッカゲルジには小妖精の岩を意味するアゥルファボルグの名称がついている商売があります。岩や石を研磨して宝石やお土産品を製作して販売する商売です。ボルガルフィヨルズゥルを訪れる観光客の増加と伴にこうした品々への需要は年々増加しているとのことです。
バッカゲルジには教会、学校、商店、村役場などがあります。かつては村から更に内陸に入ったデーシャルミーリにボルガルフィヨルズゥル教区教会が建っていました。1900年代の初め頃に、この教会はバッカゲルジに移築されました。
東ボルガルフィヨルズゥルはアイスランドで最も美しい地域のひとつとして普遍的な評価を得ていますが、一方、民話が数多く残る文化的な遺産が多い土地柄としても知られています。小妖精にまつわるボルガルフィヨルズゥルの話とか隠れた民話などはとっても想像をかきたてられるものです。 |