シンクヴェトリル国立公園について


 アイスランドは2つのマントル間の陸地として中央大西洋海嶺の軸の上に、活発な火山活動と広く符合しながら過去20~25百万年に亘って成長し続けてきた島だ。地球の深部で発生するマントル上昇流の上にある熱い表面であるアイスランドは、世界の他の如何なるところより速いスピードで大量の火山物質を溶岩として蓄積し、ギャゥ(Gjá割れ目)を広げることで大きくなり、更に軸上になったギャゥ・ゾーンに沿って発生する火山活動によって付着成長を続けている。中央地溝帯の中心へ絶え間無く新しい溶岩が蓄積されて前の溶岩が水平に押しやられ、中央地溝帯を境目にアイスランドは東と西に向けて成長を遂げているのだ。その成長のスピードは1年に東西夫々に1~1.5cm、合計2~3cm。このようにアイスランドの国土は広がリ続けており、まさに活きている島の壮絶な光景を目の当たりにできる。
ギャゥを境に、アイスランドの西の部分は北米大陸プレートに属し、東の部分はユーラシア大陸のプレートに属している。シンクヴェトリルの西端に位置する長い溶岩割れ目断層アルマンナギャゥ(Almannagjá)の西の一帯は高い絶壁で、最高地点からシングヴェトリルの全景とギャゥの壮絶な眺望を観察できる、ここからギャウの割れ目の間を低い断層となっている東端へ向かって徒歩で抜けられる。この間約20分。ユーラシア大陸とアメリカ大陸のプレートが出会う谷間の両壁の不思議な自然の造形に心が奪われる。途中、旗竿が立っているところを通りますがここは古代民主議会アルシンギで最も重要な場所だった「法律の岩」があったところと言われる。「法律の岩」には誰でも進み出て、重要な案件についてスピーチしたり、重大な事件をニュースとしてリポートしたところ。議会の開会や閉会の宣告もここでなされたし、又、法議会による判決が言い渡され、会議の日時が確認され、法行為がもたらされ、更には他の国事に関するあらゆることがここで発表され、議会に参席している誰もが「法律の岩」から重要事項に関する自分の告訴を提出することができたのだ。キリスト教への改宗など「法律の岩」で起きた出来事は後になってアイスランド・サガ書に記述して残されている。

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アルマンナギャゥ Almannagjá

シンクヴェトリル国立公園にある最大且つ最も良く知られている地殻構造裂罅(れっか、割れ目)。このギャゥの西端は高く、東に進むにつれて低くなっていて東端部分はかなり低地になる。 シンクヴェトリルで全島議会アルシンギが開かれていた頃、ここの底部の平らな草地には議会に参加する多くの人たちがキャンプを張って野営したことから、「公衆の峡谷 =すべての人の割れ目」と呼ばれていた。左の写真は冬のアルマンナギャゥ。
アルマンナギャゥはプレートテクトニクスとしては最も優れた例だと云える。アルマンナギャゥはスキャルドブレイズゥル楯状火山Skjaldbreiðurから流出した広大な玄武岩層が形成した。およそ9000年前のことである。玄武岩の熔岩は中央大西洋海嶺の頂上に横たわっているプレートに流れ落ち込んだ。そこが現在シンクヴェトリルがあるところだ。
その後、強力な地殻移動がプレートに生じ、南西部の中央付近の熔岩を北東方面に向かって沈み込みプレートに割れ目を形成した。この沈下によって誕生した地溝帯は長さ40km、幅10kmと壮大なもの。地盤沈下は結果としてその両サイドにふたつの大きな割れ目を形成させた。そのひとつが長さ9kmの割れ目アルマンナギャゥだ。高さ30mの割れ目の西側の熔岩壁は南部においてはシンクヴァトラヴァトン湖、北部においてはアゥルマンスフェットル山に達する。
もうひとつは、もう少しサイズが小さい割れ目、「大ガラスの割れ目」を意味するフラフナギャゥHrafnagjáで東側に横たわっている。ほぼ平行するアルマンナギャゥとフラプナギャゥ(Hrafnagjá)のふたつの断層の間は1789年に発生した地震により地盤が陥落して細長い地溝となっている。シンクヴェトリルの谷底はこのときにおよそ1m沈んだ。

ヴァルホットルValhöllは著名なサガ作家スノリー・ストゥルソンが所有していた一画で、現在ホテル・ヴァルホットルがあるところ(2009年7月全焼しました)。 シンクヴァトラキルキャ教会Þingvallakirkja。議会の湖の教会を意味する。サガ作家スノリー・ストゥルソンが著したオゥラブス・サガによれば、アイスランドがキリスト教に改宗した後に教会のモデルとして1016年に建てられた。建築のための木材は時のノルウエー王オラフによって、毎年6月にアルシンギのためにシンクヴェトリルに集まるアイスランド人が教会とは何ぞやとか、礼拝などのサービスを如何に執り行うかを教え込むためにアイスランド国会アルシンギに寄贈されたものとされている。教会は1118年に嵐で崩壊し、その後、数回に亘って再建されている。現在の教会は1859年に建築されたもの。鐘楼にはベルが3つあるがその最古は1698年のもの。

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 アルシンギ Alþing


シンクヴェトリルで開かれたアルシンギは国家のあらゆる問題を規制し、慣習法を通過させ、地域間の紛争を調停し、殺人や不法行為に関しては法律に基づいて判決を下した。 アルシンギが創設される前、全国の各地域はゴジ(Goði)と称される首長に率いら、それ自身の地方議会を持っていた。
アルシンギが創設された930年から868年の間、毎夏、各地の首長はもちろん、全国から自作農や一般の男女が自分たちの家や村を離れ、年に1回のみ催される2週間に亘る長期会合のためにシンクヴェトリルに向かった。
当該会合は毎夏の11週目の最初の木曜日に開始された。会合へ出席するために人々は馬の背に揺られながら何日も旅し、特に、東部からは17日間もかかったと記録に残る。シンクヴェトリルに到着すると人々は野営のためのテントを張り、会談や商売をするための仮ブースをセットした。シンクヴェトリルの平原はテント、ブース、岩石、羊や馬で埋まり、ごちゃごちゃした、活気あふれる露天の市場と化した。

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グリエッタ Logrétta
ログリエッタ(Logrétta)と称された立法議会では、ゴダール(?Godar)、有力な地方の首長そして司教が集い、議論を戦わし、新たな法律を成立させ、旧法を修正した。立法議会ログリエッタの議長は“法律を語る人"ロースピーカーを意味するログソグマズゥル(Lögsögumaður)と称され、立法議会の選挙で選ばれ、任期は3年だった。彼はアルマンナギャゥの高い岩壁を背にする特別なスポット、“法律の岩"を意味するログベルグ(Lögberg)に立ち、法律のすべてを朗唱した。そのため彼はいつの夏も法律や手続き上の規則を丸暗記し、暗証せねばならなかった。彼が立つ背後の裂溝の高い溶岩の壁の所為で、音響効果は抜群で彼の放す声は共鳴し、朗々と響き渡った。彼の言葉は遥かに離れた断崖に居る他のスピーカーによって復唱され、すべての人々に伝えられた。
1944年6月17日、アルシンギのスピーカーはこの法律の岩に立ち、シンクヴェトリルに集まった多くの人々を前に主権を有する共和国として独立を宣言した。今はその岩を見ることはできない。度重なる地震で地下深くに沈んだからだ。 元来、アルシンギの場所として選ばれたこの地は“青い森林"を意味するブラゥスコゥガル(Bláskógar)と呼ばれていて、ソゥリール・クロッピーンスケッグルという男の個人所有の土地であったが、彼が自分の奴婢を殺し、その罰として彼のすべての土地は没収され共和国所有地とされた。首長たちはこの地をアルシンギの議場と定め、議会平原を意味するシンクヴェトリルと地名を改めた。水や牧草も豊かで居留区にも近く、大勢の人々が集合するにはまさにピッタシの場所であった。

シンクヴェトリルにおける年次夏季イベントは法律を通す場としてだけではなかった。盗人が鞭打ちの刑に処せられたり、罪人が首を刎ねられ、吊るされたりする場でもあった。更には、罰当たりの女が溺死させられたり、無法者が追放の刑に処せられ、宗教上の役職が任命されたり、結婚式がとり行われ、契約にまつわる交渉ごとがなされたり、揉め事が解決されたり、名誉にかかわる決闘が行われたり、遠隔間のニュースが交換されたりもした。

シンクヴェトリルの地質学的意義
シンクヴェトリルの意義は単に歴史的なものに留まらず、地質学的にも植物学的にも興味深い存在だ。ここでは途方もなくおおきな地球の割れ目がある。毎年平均して1~1.5cm互いに離れていく北米大陸とユーラシア大陸の構造プレートだ。このことはアイスランドが毎年2~3cm東西に拡がり続けていることを意味している。中央大西洋海嶺で北米大陸とユーラシア大陸のプレートが邂逅している。 シンクヴェトリルは1930年に国立公園として布告された。全アイスランド国民の国家的聖地として保護管轄されるべきとしてシンクヴェトリルを指定する法律が通った結果だ。 「シンクヴェトリルは全アイスランド国民にとって永遠に保護すべき国家的聖地である。議会の保護下のもとに国家としてのアイスランドの永久の財産であって、売却や抵当の対象には絶対にされてはならない」。シンクヴェトリルの保護法案は居住者の侵害によって起こり得る自然環境の変化を阻止するという観点において、その後のアメリカにおいて確立された国立公園のモデルとされている。シンクヴェトリル国立公園では居住が認められない地域は広大で自然が保護されており、訪れることは自由にできるが居住したり、開発したりすることは一切禁じられている。

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