■アウトライン フィヤットラバクが自然保護区になったのは1979年。自然保護区の総面積は470㎢で海抜は500mを超える。一帯は山が多く、火山や地熱活動によって複雑に形作られ、溶岩や砂礫に覆われ、川や湖も多い。
フィヤットラバクは “山の奥”を意味するが、深く裂けた谷間に荒涼とした起伏の激しい山々が連なっていることからこの名が付いた。フィヤットラバク自然保護区はアイスランドに於ける最大の流紋岩地帯であると同時 フィヤットラバク自然公園の岩盤は8百万から1千万年前のもので、その当時この地域はレイキャネース半島からラングヨークトル氷河に向かって走る地溝帯上にあった。火山活動は最後の2百万年間が最も活発で、最終氷河期の間、間氷期流紋岩質溶岩と氷河の下で噴火して形成された氷河下流紋岩がこの地域の特徴的なロック・フォーメーションだ。その例はブレンニステインサルダ山とブラゥヌークル山Bláhnúkurに見ることができる。トルヴァ−ヨークトル氷河の北では、氷河下火山活動が透明性の砕屑岩の山を出現させた。ロズムンドゥルLoðmundurやモゥギルスホプザールMógilshöfðarがその典型的な山だ。 ここ1万年の火山活動は北東〜南西にある幾つかの割れ目だけに限って見られる。最近の活動は、1480年に始まったヴェイジヴォトン割れ目噴火でランドマンナロイガルのハットの傍に広がるロイガフロイン、ナゥムスフロイン、ノルズルナゥムスフロインなど幾つかの溶岩原と火口湖を誕生させた。 フィヤットラバク自然公園は絶好のハイキングサイト。長短様々なハイキング・パスがあり、その幾つかは現地で入手できるマップに表示されている。ランドマンナロイガルのハットからのスタートで人気のあるコースは、標高940mのブラゥフニュークル山の山頂まで(1〜2時間)と標高855mのブレンニステインサルダ山の噴気孔まで(1〜2時間)の短いハイキングルート。そのほか、フロスタスタヴァトン湖周辺を巡るコース(2〜3時間)などもある。道に迷い易いのでしっかりしたマップを入手し、ハイキングの小道から外れないようにすることが肝要。自然保護区では天候の変化も激しい。この地域では大雑把な目安だが風向きが南から南東寄りの場合には雨となり天候が悪化する。一方、北か北東寄りの場合には通常寒くなるが天候は回復に向かう。フィヤットラバク自然公園の平均気温は夏(7〜8月)で5〜14℃、冬季は氷点下6℃。 フィヤットラバクが自然保護区の西には有名なヘックラ火山が、北方にはヘックラ火山の噴火で埋没したヴァイキングの遺跡、そして長い噴火による息をのむような勇壮な光景の割れ目断層(亀裂)エルドギャゥ、長さ25kmにも達する雁行断層ラカーギガルなど南アイスランド
■スポットガイド
内陸部に入ったフィヤットラバク自然保護区にあり、まさに活発に活動している地熱地帯。含有する鉱物により黄金色、緑そして深 ランドマンナロイガルはカラフルな流紋岩の山々に囲まれキャンプ施設があって、アイスランド・ツーリングクラブが運営するハットがあり、スリーピングバッグ用の宿泊施設もある。キャンプ場の中にあり、トイレ、シャワー施設、温泉ポット、BBQ用クッキング施設が整っている快適な山小屋、マウンテ ランドマンナロイガルの周囲は言葉では言い尽くせないほどカラフルで壮観な美しさを誇っている。山々は様々な侵食作用で造られた小渓谷や山峡で分断されており、中でも特徴的な存在がヨークルギル峡谷Jökulgilだ。色鮮やかな流紋岩質の山々の間に位置している。 写真提供:東京都在住、岩井早矢香さん2005年7月撮影)
★ドゥマダールル Dómadalur ドゥマダ−ルルは渓谷で、ランドマンナへトリル洞窟があるクリングラKringlaの真東に位置している。谷は小さな湖を封じ込めておりそのために水が流入する事は無く、夏には湖のサイズはかなり小さくなる。春から夏の始め頃にかけては、谷底はほとんど水浸しになる。しかし、水が引いた後は草花で緑色が広がる。ドゥマダ−ルルは法律の谷を意味するが、ふたつの家族間に生じた実父確定を巡る法廷がここで開かれた事に由来している。谷の真東には黒曜石の溶岩原ドゥマダルスフロインDómadalshraunがある。フロスタスタザヴァトン湖Frostastaðavatnやランドマンナロイガルに向かうルート上に当る。 ★クリングラ Kringla 丸い円を意味するクリングラは海抜590mにある平地でかつては湖底であったところ。ドゥマダ−ルル・ハイランドロードが途中でふたつに分岐し、再び合流するが、この平地はこのふたつの道がつくる楕円状の地域にある。植物が植わり、1000m級のほとんどが不毛の山々に囲まれている。 ★ランドマンナへトリル洞窟 Landmannahellir ランドマンナへトリルはロズムンドゥル山の南に小高く聳えるヘトリスフィヤットル山の麓、ロズムンダルヴァトン湖の西にある洞窟。奥行き14m、幅8m、高さは4mでかつては格好の避難所となっていた。毎年9月の終わりに農夫が放牧していた羊を集める囲いもここに作られて農夫たちの宿泊施設としても利用されていた。今日ではハット(まだ比較的新しい)が建てられ、湖でのアングラー、ハイカーそしてホーストレッカーに利用されている。透視能力者によればこの洞窟附近には幽霊がうろついていると云う。 ★ドゥマダールスヴァトン湖 Dómadalsvatn ドゥマダ−ルル・ハイランドロード沿いにある小さな湖で小さい谷間にある。雪解け時の春には湖の水量は溢れんばかりになる。湖の南の一帯は水深が浅く、ブラウントラウトのフィッシングが楽しめるが3〜4sの獲物が期待できる。 ★フロスタスタザヴァトン湖 Frostastaðavatn 海抜572mの高地にある溶岩に囲まれたユニークな湖。その面積は2.6㎢。フロスタスタザヴァトン湖にはかなりの数の丘陵があり、その幾つかはカラフルで黄色や茶褐色をしている。また、湖の南西コーナー部分には黒色の溶岩が広がっている。湖は北極イワナのフィッシング・サイトとして広く知られている。土地の人々の言い伝えに寄れば、かつて湖近くにファーム・フロスタスタジルがあった。こに住んでいた人々はヒレがあべこべについているイワナを食べた。この異常さに気づいていなかったために、魚が有毒であることが分かっていなかった。結果的には全員が死亡することになった。しかし、このファームの廃墟や痕跡は未だ見つけられていない。 ★ロズムンドゥルヴァトン Löðmundurvatn 面積が僅か0.75㎢の小さな湖。湖の水はヘトリスクヴィースル川(Helliskvísl)に排出されるがこの川はより西よりの地点で透水性のある溶岩原に入って砂原に消え入る。川の長さは短い。湖の北岸にはこの地域の最高峰、ロズムンドゥル山(Löðmundur)が聳える。標高1074mの際立って印象的な山。 ★ヘトリスクヴィースル Helliskvísl 平地クリングラを流れる川で、冷たい湧き水と周囲の山々の雪渓からの雪解け水が源水。川が排出する範囲はおよそ90平方kmだが水量は常に変化するのが特徴。1913年に発生したランバフットルの噴火によって誕生した新しい溶岩原が川の流れを堰き止めた結果、ひとつの湖ができた。けれども、川が再び溶岩原周辺に流れ出し始めると間もなく湖はその姿を消した。数十年もの間、透水性の強い溶岩は水を飲み込み続けた結果、20世紀の終わりごろには溶岩原越えにトゥングナアゥ川に注ぐ新たなコースを誕生させた。その後、それはショゥルスアゥ河にコース変更している。 ★ソイズレイスヴァトン Sauðleysuvatn ソイズレイスヴァトン湖は四方に4つの不毛な山の間にあり、その位置する海抜は581m。湖の西に少し向かうとハットがあるランドマンナへトリル洞窟だ。ドゥマダ−ルル・ハイランドロードからは山の陰になるので湖は見られない。 「火の山峡」を意味する、息をのむような光景に出会える長い噴火による割れ目(亀裂)。断層のすぐ南に位置する標高812mの凝灰岩の山ヘルズブレイズ(Herðbreið)からエルドギャゥの眺望は絶景。割れ目ギャゥの主要部分は北の一帯で、中心部は道を挟んで反対側の一帯となる。エルドギャゥは935年に噴火が始まり3−8年続いた噴火割れ目で、19.6立方`もの大量の溶岩を流出させた。有史以来世界最大の玄武岩質溶岩流噴火である。噴火により219Mtもの二酸化硫黄を大気中に放出させたと推測されている。割れ目はミールダルスヨークトル氷河(Mýrdalsjökull)からギャゥティンドゥル山(Gjátindur)まで、南西と北東の方向に30kmも続いている。北の端附近は幅600m、深さ200mもあり最も印象に残るギャゥとなっており、その変化に富んだ光景は畏怖心を起こさせるほど。割れ目は多くの箇所で分断され、ところどころで途切れているがそのいろんな箇所で溶岩や火山物質を産出してきた。ヘルズブレイズ山とミールダルスヨークトル氷河の中間点に当る最も南寄り一帯の溶岩はアイスランドへの定住が始まったころ(870年頃)のもの。また、北部と中央部のものは700年ごろの噴火によるものでスカ二タアゥ渓谷に大量の溶岩を流し込んだ。割れ目の幾つかはミールダルスヨークトル氷河の氷冠や1783〜84年に噴火したラーキの溶岩流によって蔽い隠されている。 エルドギャゥには北オゥファイラ(Nyrðri−Ófæra)と南オゥファイラ(Syðri−Ófæra)の二つの川が流れていて、北オゥファイラ川は二つの印象深い瀑布となって割れ目に流れ込んでいる。オゥファイルフォス(Ófærufoss)の滝は珍しい二重滝で下部の滝の上部に緩やかにカーブしているアーチ状の天然の橋が架かっており、この橋の部分は玄武岩で、溶岩縁から流れ落ちる川によって軟らかい岩が洗い流されてできたもの。
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Revised:11/01/24